和処まつ崎

下関の台所、唐戸市場からすぐの中之町の商店街。
通りから細い路地に入った奥に、「和処まつ崎」はあります。
地元の者でもわかりにくい場所。
まさに、大人の隠れ家です。

まつ崎は私、内田が最近、お気に入りの日本料理店です。
何が気に入っているかって、まずは大将の松崎真一さん。
愛想笑いがすぐにばれるような生真面目な職人。
お世辞下手な方ですけど、こちらの料理の質問には真摯に、優しい口調で答えてくれる。
話の端々に料理に対する探究心の深さを感じられます。
食べるだけの私からするといつも安心して座っていられるんです。

大将との付き合いはそんなに長くないのですが、初めて訪問したときにいただいた、ワタリガニが衝撃的なうまさでして。
以来、お得意先や友人らと足を運んでいるんです。
今、下関でも指折りのうまいモノを食べさせる店ではないでしょうか。

今回は、「内田がいく」の取材でしたので、離れの個室に通されました。
離れは、お客様や数人の友人と会食する時にとっても便利な場所です。
ただ、個人的には大将と向き合えるカウンター席が好き。
取材前にちょっと座って、食前酒を一杯。
下関酒造の純米大吟醸・獅道を開け、大将と乾杯しました。
松崎さんと料理などについて話しながら、冷やした獅道をゆっくりと傾ける。
今日はどんな料理がでるのだろう?
ワクワクしてきます。

向付けは魚の他に、ムカゴや銀杏といった秋の幸が入っていて季節感を感じます。
しっかりした味わいなので、甘口でコクのあるお酒で。

内田の大好物であるお刺身は、馬関の純米吟醸をぬる燗にして。
まつ崎のおすすめ料理である刺し身はいつも鮮度がよく、大将の目利きの優秀さ実感させられます。
厳選された旬の魚に、隠し包丁や炙りなど細かな仕事がしてあり、まさに絶品です。
お酒が進みます。

次にマツタケの土瓶蒸し。
すばらしい芳香が鼻を抜けていきます。
秋の香りに浸りながら、しばしスタッフの女性と世間話。
彼女らはいつも愛想が良くて、まつ崎の居心地の良さを演出してくれます。

枝豆をつまみに日本酒を飲んでいたら、だんだん気持ち良くなってきました。
若き獅子の酒でもっと酔っ払いましょう。
この若き獅子の酒は、50%磨き、純米吟醸酒のかすみ酒です。
エレガントなうま味とさわやかな余韻のバランスが最高です。

酔いがほどよく回ってきたところで、笹カレイを焼いてもらいました。
焼き魚も、まつ崎のおすすめ料理です。
尾びれがくるんと上を向いた形に焼いていて、目でも楽しませてくれます。
シンプルだからこそ、ごまかしが効かない焼き魚。
焼き加減も塩加減も抜群です。

大将は、関門海峡の対岸になる北九州の門司出身だそうで、地元の高級料亭を皮切りに、大阪や倉敷の割烹で和の世界を学び、下関に流れ着いたとか。
唐戸にあった割烹で16年にわたって板場に入り、その割烹が閉店したのを機に独立されました。

今や松崎さんの腕は、下関唐戸界隈でも噂の腕前ではないでしょうか。
季節の新鮮野菜、旬の魚を確かな目で選び、一番おいしい方法で調理してくれます。
お刺身はもちろん、煮付けも、揚げ物も、すべてのレベルが高い。
さらに魚だけでなく、肉料理、野菜料理とメニューのバリエーションが幅広いところもうれしい。

メニューに乗っていないのに、「しめに海鮮チャーハンが食べたいなあ」なんてわがまま言ってると、「はいよ!」との声が返ってきました。
エビにタコなど魚介がたっぷり。
ご飯はパラパラで、魚介ダシも効いていて、和テイストが効いた海鮮チャーハン。
ほんとにうまい。
どんなジャンルにも対応できる技。
大将、恐れ入りました。

和処まつ崎
下関市中之町3-19
電話 083-242-1900

下関酒造|毎日の食卓からハレの日まで。